Jリーガーの挫折を経て、
ビジネスの面白さに、無我夢中に取り組んだ

私は小学校の頃からJリーガーになるのが夢で、ずっとサッカーの練習に力を入れていました。高校卒業後、ガンバ大阪に入団しJリーガーになることができました。しかし18歳で入団したものの、自分の思い描いていたサッカーのレベルよりも高く、入団3年目で戦力外通告を受けてしまいました。サッカーを手放したのは、22歳。大卒で同い年の人たちも会社に新卒で入るというタイミングで、私も父親が当時経営していたリユース・リサイクル事業に就職したのが社会人1年目ということになります。

 

当時は、俗に言うサッカーバカだったので、ビジネスのことなんて何一つわかっていない状態の中で飛び込みました。初めての仕事が、先輩たちが買い取りしてきた、冷蔵庫とか、洗濯機とかを路上に、10台、15台と並べて、それを炎天下の中で洗い、綺麗にメンテナンスするというものでした。その時に、不要な人からすると、いくらでもいいから引き取ってくれればいい、というものを、必要な人につなぐことで、3,000円で仕入れたものをきちんと磨いて、1万2,800円で喜んで買っていただける人がいて、約1万円ほどの利益が生まれるということを目の当たりにした時に、リユース・ビジネスってすごく面白いなと感じたのを鮮明に覚えています。

課題の解決策と、利益は比例する

2005年から本格的にこのビジネスに携わり、電化製品や家具、オフィス用品、厨房用品を扱うなかで、3兄弟で相談して2007年に、ブランド品の買取専門店「なんぼや」を立ち上げました。

 

「なんぼや」という、名前の由来でもあるのですが、顧客は売りたい価格があって、私たちは買いたい価格がある。そこを、ただ従来の質屋のように上から目線で「この金額でなければ買いません」みたいなスタンスではなくて。関西人って、やっぱり定価があっても、そこからこれなんぼになんのかみたいな感じの交渉が好きなので。私も関西人で、そういう感覚は持っていたので、顧客に歩み寄る形で、面白く、私たちの価格をすり合わせていくみたいな形で買取をしていました。

 

そうした中で、お客さまが価格だけで意思決定しないんだということに気付きました。

あるとき、お客さまが来店して、私はいつもどおりの接客をして、買取価格が7万円になりますと伝えた時に、実はその商品は、他社で10万円の買取価格がついてたんですね。扉を出てたった10分自転車に乗ってその店に行けば、3万円も高く買い取ってもらえるにも関わらず、そのお客さまは、あなたに売りたいって言ってくれた。これは自分でも不思議で理解するのに少し時間がかかったんですが、そういったことが頻発したんです。つまりこれは、3万円以上の価値を、私自身が生み出しているから、お客さまから私たちにとっての利益をいただくことができたんだって気づいた時に、ああ、そういうことかと。そうした経験から、磨くべきものは知識やスキルではなくて、お客さまと信頼関係を構築するための人間力であるということを掴みました。

 

未だに忘れられないお客さまもいます。物を手放すときは必ず私を指名してくれるお客さまがいました。

どこに持ち込んでも価格なんてそこまで大差ない中で、私を指名してくれるということは、その人の人生に存在を許されるというか。また会いたいと思ってもらえたからご指名してもらえるわけで。

まるで友人のように値段交渉をして、お客さまも価格ではなく、会いたいだけでご指名いただいているようでした。優秀なバリューデザイナーとは、まさにそんな存在で、再び会いたくなる人になっているかどうか。知識やスキルも必要ですが、人間力が何よりも大切です。

自分の可能性を信じてほしい
そのためのきっかけをつくっていきたい

バリューデザイナーとは、お客さまに提案できる幅・自由度の高さ。お客さまに対する対応が、自分次第で無限にあるところが魅力です。いろんな今まで見たことのないようなブランド品に出会う喜びもあります。それを不必要な人から必要な人に繋ぐことで、何倍にも価値が変わっていく瞬間に介在できる楽しさ。お客さまとの会話を通じて、さまざまな成長の機会があります。日々の成長を実感できる面白さも感じます。私は、この仕事に無我夢中になって遊ぶように仕事をしてきました。

 

人の成長とは、自分の可能性を信じられるかどうかに尽きるんじゃないかというのが私の考えです。

多くの人々は、自分の身の丈にあったという、なぜか自分はこうだっていう定義のもとで無意識のうちに意思決定してしまう。その定義付けが制限になって、自分の可能性を狭めてしまってる人が世の中大多数だと思うのです。

 

私は、サッカーしかしてこなくて、サッカーにおける自身の可能性を追求し続けてきたから、ある意味サッカー選手というものを手にすることができた。でも、自分のサッカー選手というキャリアを奪われるような格好になってしまったわけです。でも私はそんな中でも、もっとできるんじゃないか、できるはずだっていう風に、なんの根拠もない自信を信じたからこそ、何の学歴もない私が、こうして1,000人の企業のトップに立つことができています。

 

自分にとって魅力的な人って何か考えた時に、自分が好きなことをしている人や、夢中になっている人がすぐに思い浮かびます。大切なことにフォーカスしている人というのは、まさに好きなものに夢中になっている人です。自分にとって大切なことをきちんと選択できる大人が結局、自分の人生を生き、幸せを手にしてるような気がします。

 

他人の人生を生きている人ばかりの世の中にあって、今まで気づいていなかったことに気づき、自分を取り戻した時に初めて幸せを感じられるのではないか。

 

だからこそ私はバリュエンスで、そんなきっかけをつくっていきます。

 

※本記事は、インタビュー時点の内容です。

バリュエンスグループCEO
バリュエンスホールディングス株式会社 代表取締役
バリュエンスジャパン 代表取締役

SAKIMOTO
SHINSUKE

2003年、ガンバ大阪を戦力外に。JFLを経て23歳でサッカー界から“前向きな撤退”を果たし、ビジネスの世界へ。ブランド買取店『なんぼや』、アスリートの持続可能な未来を創るスポーツ関連事業などを行うバリュエンスホールディングス代表取締役。